片吹の地盤
片吹団地は多摩丘陵の一角に位置し、東南東に延びた尾根筋に昭和40年に開発、造成された住宅地です。自然地盤は堆積時代の古い安定した地層で形成されており、起伏に富んだ地形となっています。地質的には非常に浅い深度から地山の安定した締まった硬質層が分布しているといわれています。片吹団地の西側は能見台森の尾根筋との間の谷合に能見台五丁目道路が作られており、東側は京浜急行本線、国道16号が北東から南西方向に通っており切り開かれた急斜面になっています。また、南側の一部には急傾斜崩壊危険区域がありますが、対策は一応取られています。北側は能見台東公園が西側の高台から東側の低部へと広がっています。
このような尾根筋の高台の上に片吹団地は大規模に造成されているため、比較的平坦な頂丘部や切土主体の宅地では良好な地盤となっていますが、盛土主体の宅地や切土と盛土が混在する宅地では不同沈下を起こし易いバランスの良くない地盤となっている恐れがあります。団地内の一部には可なりの盛土造成された場所があるので、地震時に他所より揺れが大きくなります。地形的に宅地周辺の一辺、多ければ三辺が隣家或いは道路と段差がある家が殆どです。このため、境界に特に高い間知ブッロク擁壁がある宅地は大地震や大雨時に注意が必要です。団地の東側及び南側の急斜面に面した道路は震災時、破断或いは崩壊する恐れがあるので避難時には注意します。また、道路に面したブロック塀も倒壊するかもしれないので、ブロック塀には近づかないことです。
1923年9月発生した関東大地震の再来を想定した南関東大地震が起こった場合を考えますと、家屋の倒壊危険区域は横浜市の算定では次のようになっています。
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昭和55年度以前に建てられた木造家屋が50%以上り、該当ブロック有り。
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且つ地震発生時、震度6弱以上の地区は団地内全域該当。
以上の二条件を同時に満たすところがあるので、平成15年時点で50%弱のブロックがこの危険区域に該当していました。しかし最近は住宅の建替えが多くなり該当区域はかなり減ってきています。
同じく南関東大地震が発生した時に横浜市が想定している家屋延焼危険区域は次のとおりです。
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建物密度が80棟/ha以上で、50棟以下で非該当。
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且つ、木造建物混入率が75%以上の区域で、殆どが木造で該当。
以上の二条件を同時には満たさないので、一応、団地内は危険区域には該当しません。中区山手町にある横浜地方気象台で観測した風向きは秋、冬、春の三シーズンを通じて北風が多く、特に冬は50%が北風です。
火災の危険
片吹団地では西側から吹く風が多いようです。風向きによっては、斜面に沿って吹き上げる強風で延焼する恐れがありますので、極力、失火しないよう注意する必要があります。片吹団地での災害に対する危険を纏めてみますと次のようになります。
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自然地盤は良好だが、個々の宅地でみれば盛土部があれば地滑りを起こすおそれあり。
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宅地と隣家、道路との境に大きな段差があり間知ブロック擁壁で造成されている処では、境界が崩壊するおそれあり。
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昭和56年以前に建てられた木造家屋のうち、二階建て家、一階の間口が広い家、複雑な形状の家、重い瓦屋根の家屋等は、損傷を受け易い。
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団地内は木造家屋が多く傾斜地のため失火すると延焼するおそれあり。
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急斜面沿いの道路は崩壊するおそれあり。
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一番の危険はみんなの慢心!!!
次回は、「減災への取組み」 について考えます。